異所性蒙古斑-赤ちゃん・子どものレーザー治療
(原因、治療方法~副作用まで徹底解説)
異所性蒙古斑の症状
異所性蒙古斑とは、生まれたときから認められる青あざで、生まれたばかりの赤ちゃんのほぼ100%に認められる、お尻の青あざの蒙古斑がお尻以外の部分にあるものを指します。真皮と呼ばれる、深い部分の皮膚に色素細胞(メラノサイト)が集まっているため、皮膚表面からは青く見えます。お尻にできる蒙古斑は5〜6歳ごろまでに自然に消失しますが、異所性蒙古斑は蒙古斑に比べて消退が遅いとされ、10歳ごろまでに目立たなくなるとされています。
色がうすくならない物も4%ほどあると言われ、色が濃いもの、境界がはっきりしたものなどが、色が残りやすいとされています。小児の場合、レーザー治療を行うことで、青色が目立たなくなるのを後押しすることができ、青色がうすくなる時期を早めることができます。皮膚の薄い乳児期(1歳未満)から治療を始めたほうが、治療効果が高く、色素沈着などの合併症のリスクも少なくなります。
成人の場合は、レーザー治療を行うことで青色をより目立たなくすることが期待できますが、小児の時期に治療する場合に比べて、色素沈着などの合併症のリスクが高いので治療の適応を慎重に判断する必要があります。
異所性蒙古斑ができる原因
お尻にできる蒙古斑、それ以外の部分にできる異所性蒙古斑ともに、生まれる前に存在している皮膚の深い部分の色素細胞(メラノサイト)が、生まれた後も残っているため皮膚が青く見える原因だと言われています。
治療を推奨する方の特徴
1)1歳未満の小児
異所性蒙古斑の治療はいつからでも始めることができますが、小児の場合、一人で歩けるようになる1歳未満の乳児期から治療を始めることをお勧めいたします。皮膚が薄く治療効果が高いだけでなく、日焼けをしていることも少ないので安全に治療をお受けいただきやすくなります。また、物心がつく前に一連の治療を完了できると精神的な負担を少なくできる、というのも乳児期から治療をお勧めする理由です。
2)あざが気になる方
異所性蒙古斑があることで、体の機能や生命維持に影響が出ることは無く、治療の目的は整容面(見た目)の改善を主としたものになります。他の生まれつきのあざと異なり、10歳ごろまでに皮膚の凹凸やシワなどの「あと」を残さず、自然に色がうすくなることが期待できるので、そのことを考慮しつつ治療計画を立てる必要があります。小児の場合は肘や膝より先の部分(半袖やハーフパンツで隠れない部分)にあるもの、色調が濃く10歳以降も色が残ると予想されるものなどの場合は、治療をお勧めいたします。成人の場合は自然消退が期待できないので、ご本人様が気になるなら治療を検討いたします。ただし、小児に比べて色素沈着、色素脱失(白抜け)などの合併症が発生しやすいので、色調が薄い場合は治療をお勧めしないこともあります。
異所性蒙古斑の治療方法
異所性蒙古斑に対し、当院ではレーザー治療を行っています。メラニンに反応するレーザーを当てて、異所性蒙古斑の原因である真皮に存在する色素細胞(メラノサイト)を破壊して徐々に青色を目立たなくしていきます。異所性蒙古斑に対して、有効なレーザーの種類はいくつかありますが、当院ではFotona社のPQX Pico Laser (PQXピコレーザー)という、ピコ秒発振Nd: YAGレーザーを用いて、異所性蒙古斑のレーザー治療を行っております。
当院では、異所性蒙古斑に対し6×6mmのスポット径(1ショット当たりの照射面積)で照射できるハンドピースを使用しております。標準のハンドピースに比べ、4倍の照射面積(標準の照射面積は3×3mm)で治療を行うことができるので、広範囲に効率よくレーザーを照射することが可能となります。1回の治療も短時間で完了するため、治療をお受けいただく患者様のご負担を減らすことが可能です。
ピコ秒Nd::YAGレーザーは従来のQスイッチ(ナノ秒)Nd:YAGレーザーに比べて低い出力(放射露光)でも効果があるため、照射後の合併症である色素沈着や色素脱失などのリスクを低減できると期待されています。
PQXピコレーザーの特徴
より短時間で強い出力
従来の他社レーザー機器と比較し、四角形の照射径と最短パルス幅(レーザーの照射時間)によって、短時間での施術を実現。
生後の赤ちゃんにも
照射可能出生後間もない赤ちゃんの皮膚に突如現れる青あざ(異所性蒙古斑、太田母斑)などにも施術が可能です。
治療の流れ
- ❶ カウンセリング
- レーザー治療には適応があります。安全に治療が可能と判断されれば、なるべく早期にレーザー照射を行います。
- ❷ 麻酔
- レーザー照射の前に麻酔のテープやクリームを照射範囲に塗布します。麻酔がしっかりと効くまで30〜60分ほどお待ちいただきます。お子様の場合、その間の飲食や授乳はお控えください。
- ❸ レーザー治療
- 麻酔のお薬が十分に効いたら、患者様はレーザー照射のお部屋にご案内いたします。治療中は安全のため、眼を保護するゴーグルとベッドからおちないようにするシートベルトのような器具を使いながらレーザーを照射いたします。治療時間は異所性蒙古斑の大きさにもよりますが、数分〜十数分程度です。
- ❹ 治療後
- 治療後はワセリンを照射部位に塗布してご帰宅となります。自宅でも1日2回のワセリン塗布を照射後1週間まで継続してください。次回の照射は3〜6ヶ月ほど間隔をあけてのご案内となります。異所性蒙古斑は他のあざと比べて、照射後の色素沈着、色素脱失(白抜け)のリスクが高いので、治療の間隔は長めになります。次回の治療まで治療部位の遮光(UVケア)を徹底して行ってください。
治療の副作用と注意点
レーザー治療を行うと、異所性蒙古斑の色が薄くなることが期待できますが、小児の場合は自然消退を予想して治療のゴールを設定します。具体的には、成人に比べて色素が残るところで治療を終了とします。小児の場合、レーザー治療の目的は「自然消退を後押しする」ことであり、成人と同じところを治療のゴールとすると治療回数が増える分、色素沈着、色素脱失(白抜け)などのリスクが高まります。成人の場合は自然消退が期待できないので、ある程度離れてみて見て、わからない程度の色になるところを治療のゴールに設定します。
異所性蒙古斑の原因である色素細胞(メラノサイト)の分布する深さの違いにより、レーザー治療の反応にムラが出て、異所性蒙古斑に色調の濃淡が出現することがあります。色調の濃淡は治療を繰り返すことで、徐々に均一になっていきます。
異所性蒙古斑を効率よく治療するためには、レーザー照射直後にあざが白く変化する設定でレーザーを当てていく必要があります。従来のQスイッチ(ナノ秒)Nd: YAGレーザーに比べ、内出血のリスクは少ないですが、内出血が生じた場合、1〜2週間ほどで吸収されて消えていきます。レーザー照射後は軽いやけどのような状態になり、むくみや腫れ、赤みの増加などが1週間ほど続きます。1日2回のワセリン塗布を照射後1週間まで続けてください。照射の後、青色に対する反応が強く出ると、水ぶくれになるなどの症状が出ることがあります。水ぶくれになった場合は、なるべく水ぶくれを破かないように注意しながら、ワセリン塗布を水ぶくれが無くなるまで継続してください。水ぶくれが破れてしまった場合も同様の処置を続けてください。シャワー浴、沐浴は適宜可能ですが、水ぶくれになっている部分はお風呂を出る前にシャワーなどでもう一度流して、清潔に保ってください。日焼けがあるとレーザー治療の効果が下がるだけでなく、上記のように反応が強く出て水ぶくれになるリスクが高まります。日焼けの程度が強い場合は、リスクを鑑みて照射を延期することがあります。レーザー治療の期間中は異所性蒙古斑の周囲を遮光するように十分ご注意下さい。
おおよその費用
以下の表をご覧ください。3歳未満のお子様は乳幼児加算がかかります。四肢と胸腹部、背部(背中、臀部を含む)それぞれ保険点数の算定が行われます(※)。
居住されている自治体によっては医療費の助成制度が利用できる場合があります。詳しくは各自治体にお問い合わせください。
※例として 右腕と左太ももに異所性蒙古斑がある場合は、それぞれの部位で面積によって保険点数が決まり、それらを合算します。
対象年齢 | 保険適応(2割負担) ※乳幼児加算あり | 保険適応(2割負担) ※乳幼児加算なし | 保険適応(3割負担) |
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0歳~3歳未満 | 3歳~小学校入学前 | 小学生~ | |
4㎠未満 | ¥8,400 | ¥4,000 | ¥6,000 |
4㎠以上16㎠未満 | ¥9,140 | ¥4,740 | ¥7,110 |
16㎠以上64㎠未満 | ¥10,200 | ¥5,800 | ¥8,700 |
64㎠以上 | ¥12,300 | ¥7,900 | ¥11,850 |
参考・引用文献
河野太郎.“さあレーザー治療を始めよう!2023”.
http://www.kokuseido.co.jp/book/no-0578/