単純性血管腫(毛細血管奇形)-赤ちゃん・子どものレーザー治療
(原因、治療方法~副作用まで徹底解説)
単純性血管腫(毛細血管奇形)の症状
単純性血管腫とは、生まれたときから認められる、境界がはっきりした赤あざです。真皮と呼ばれる、深い部分の皮膚にある毛細血管が拡張した結果、周囲の皮膚に比べて赤色が濃い状態になっています。乳児血管腫(いちご状血管腫)と異なり、成長のスピードを超えるような増大はなく、医学的な分類でも腫瘍ではないため、最近は毛細血管奇形と呼ばれています。
幼少期は薄ピンク色や赤色などの色調で、平坦な赤あざですが、年齢を重ねるとともに徐々に色が濃くなり、厚みが増したり、イボのような膨らみが出現することがあります。レーザー治療を行うことで、赤みを目立たなくすることができ、色や厚みの変化を抑えることができます。皮膚の薄い乳児期(1歳未満)から治療を始めたほうが、治療効果が高いと言われています。
単純性血管腫(毛細血管奇形)ができる原因
単純性血管腫ができる原因については、まだハッキリとはわかっていません。遺伝や妊娠中の経過や出来事は発症に関係ありません。約0.3%の赤ちゃんにできると言われており、乳児血管腫(いちご状血管腫)よりやや珍しい生まれつきの赤あざです。乳児血管腫と異なり、低体重で生まれてきた赤ちゃんにできやすいということはありません。その他に、妊娠中の経過や出来事が原因・リスクとなるということもなく、遺伝も発症に関係ないと言われています。
治療を推奨する方の特徴
1)1歳未満の乳児期
単純性血管腫は乳児血管腫(いちご状血管腫)と異なり、速いスピードで大きくなることはありません。そのため、治療の目的は整容面(見た目)の改善を主としたものになります。単純性血管腫の治療はいつからでも始めることができますが、特に一人で歩けるようになる1歳未満の乳児期から治療を始めることをお勧めいたします。皮膚が薄く治療効果が高いだけでなく、日焼けをしていることも少ないので、安全に治療をお受けいただきやすくなります。また、物心がつく前に一連の治療を完了することで、精神的な負担を少なくできるということも、乳児期から治療をお勧めする理由の1つです。
2)大人になっても赤みが残っている方
単純性血管腫の一種に正中部母斑(サーモンパッチ)、ウンナ母斑というものがあります。正中部母斑は体の中心線である、額の真ん中、眉間、上まぶたの内側、鼻の下(人中)、うなじに生じる赤あざで、赤ちゃんの20%〜30%に認められると言われています。
正中部母斑は生後1年程度で多くの場合目立たなくなっていきますが、稀に大人になっても赤みが残ることがあります。また、正中部母斑のうち、うなじに生じたものをウンナ母斑と呼び、約半数のケースが大人になっても赤みが残ると言われています。大人になっても赤みが残っている正中部母斑、ウンナ母斑が気になる場合は、単純性血管腫と同様にレーザーでの治療をお勧めいたします。
単純性血管腫(毛細血管奇形)の治療方法
単純性血管腫に対し、当院ではレーザー治療を行っています。レーザー治療は色素レーザーという、赤い色に反応するレーザーを当てて、単純性血管腫の原因である拡張した毛細血管を破壊して徐々に赤みを目立たなくしていきます。当院ではシネロン・キャンデラ社のVbeam prima (Vビームプリマ)を用いて、単純性血管腫のレーザー治療を行っております。従来機種のVbeam (Vビーム) 、Vbeam Ⅱ (VビームⅡ) に比べて、1ショット当たりの面積が大きく、高出力で照射が可能です。このため、広範囲に効率よくレーザーを照射することができ、1回の治療も短時間で完了するため、治療をお受けいただく患者様のご負担を減らすことが可能です。
治療イメージ
Vbeam primaにて出力される595nmのレーザー光により、
血液内のヘモグロビンにのみ反応し、様々な赤みの改善に役立ちます。
血管内の病変を起こしている部分では、ヘモグロビンが光エネルギーを吸収し熱エネルギーに変換します。すると血管内で皮膚細胞が線維化し凝固するため、皮膚表面に赤く見えていた症状が改善します。
治療の流れ
- ❶ カウンセリング
- レーザー治療には適応があります。安全に治療が可能と判断されれば、なるべく早期にレーザー照射を行います。
- ❷ 麻酔
- レーザー照射の前に麻酔のテープやクリームを照射範囲に塗布します。麻酔がしっかりと効くまで30〜60分ほどお待ちいただきます。お子様の場合、その間の飲食や授乳はお控えください。
- ❸ レーザー治療
- 麻酔のお薬が十分に効いたら、患者様はレーザー照射のお部屋にご案内いたします。治療中は安全のため、眼を保護するゴーグルとベッドから落ちないようにするシートベルトのような器具を使いながらレーザーを照射いたします。治療時間は単純性血管腫の大きさにもよりますが、数分〜十数分程度です。
- ❹ 治療後
- 治療後はワセリンを照射部位に塗布してご帰宅となります。自宅でも1日2回のワセリン塗布を照射後1週間まで継続してください。次回の照射は3ヶ月ほど間隔をあけてのご案内となります。次回の治療まで治療部位の遮光(UVケア)を徹底して行ってください。
治療の副作用と注意点
現時点(※)で単純性血管腫を完全に治すことは難しく、再発する可能性が非常に高いとされています。そのため、生涯を通して赤あざの部分が目立つ様になったら治療を繰り返す必要があり、レーザー治療の目的は赤みを一時的に目立たなくすることにあります。
※2023年12月時点
単純性血管腫を効率よく治療するためには、レーザー照射後に内出血が起こるような設定でレーザーを当てていく必要があります。内出血は1〜2週間ほどで吸収されて消えていきます。レーザー照射後は軽いやけどのような状態になり、むくみや腫れ、赤みの増加などが1週間ほど続きます。1日2回のワセリン塗布を照射後1週間まで続けてください。
照射の後、赤色に対する反応が強く出ると、水ぶくれになるなどの症状が出ることがあります。水ぶくれになった場合は、なるべく水ぶくれを破かないように注意しながら、ワセリン塗布を水ぶくれが無くなるまで継続してください。水ぶくれが破れてしまった場合も同様の処置を続けてください。
シャワー浴、沐浴は適宜可能ですが、水ぶくれになっている部分はお風呂を出る前にシャワーなどでもう一度流して、清潔に保ってください。
日焼けがあるとレーザー治療の効果が下がるだけでなく、上記のように反応が強く出て水ぶくれになるリスクが高まります。日焼けの程度が強い場合は、リスクを鑑みて照射を延期することがあります。レーザー治療の期間中は単純性血管腫の周囲を遮光するように十分ご注意下さい。
おおよその費用
以下の表をご覧ください。10㎠ごとに費用が変わり、3歳未満のお子様は乳幼児加算がかかります。居住されている自治体によっては医療費の助成制度が利用できる場合があります。詳しくは各自治体にお問い合わせください。
対象年齢 | 保険適応(2割負担) ※乳幼児加算あり | 保険適応(2割負担) ※乳幼児加算なし | 保険適応(3割負担) |
---|---|---|---|
0歳~3歳未満 | 3歳~小学校入学前 | 小学生~ | |
10㎠未満 | ¥9,820 | ¥5,420 | ¥8,140 |
10㎠以上20㎠未満 | ¥10,820 | ¥6,420 | ¥9,640 |
20㎠以上30㎠未満 | ¥11,820 | ¥7,420 | ¥11,140 |
30㎠以上~40㎠未満 | ¥12,820 | ¥8,420 | ¥12,640 |
- 40㎠以上はこちら
対象年齢 保険適応(2割負担)
※乳幼児加算あり保険適応(2割負担)
※乳幼児加算なし保険適応(3割負担) 0歳~3歳未満 3歳~小学校入学前 小学生~ 40㎠以上~50㎠未満 ¥13,820 ¥9,420 ¥14,140 50㎠以上~60㎠未満 ¥14,820 ¥10,420 ¥15,640 60㎠以上~70㎠未満 ¥15,820 ¥11,420 ¥17,140 70㎠以上~80㎠未満 ¥16,820 ¥12,420 ¥18,640 80㎠以上~90㎠未満 ¥17,820 ¥13,420 ¥20,140 90㎠以上~100㎠未満 ¥18,820 ¥14,420 ¥21,640 100㎠以上~110㎠未満 ¥19,820 ¥15,420 ¥23,140 110㎠以上~120㎠未満 ¥20,820 ¥15,340 ¥23,010 120㎠以上~130㎠未満 ¥21,820 ¥17,420 ¥26,140 130㎠以上~140㎠未満 ¥22,820 ¥18,420 ¥27,640 140㎠以上~150㎠未満 ¥23,820 ¥19,420 ¥29,140 150㎠以上~160㎠未満 ¥24,820 ¥20,420 ¥30,640 160㎠以上~170㎠未満 ¥25,820 ¥21,420 ¥32,140 170㎠以上~180㎠未満 ¥26,820 ¥22,420 ¥33,640
参考・引用文献
河野太郎.“さあレーザー治療を始めよう!2023”.
http://www.kokuseido.co.jp/book/no-0578/