乳児血管腫(いちご状血管腫)-赤ちゃん・子どものレーザー治療
(原因、治療方法~副作用まで徹底解説)
乳児血管腫(いちご状血管腫)の症状
乳児血管腫とは、生まれてから数週以内に出現する赤あざで、果物の「いちご」のような見た目のことが多く、いちご状血管腫とも呼ばれています。
生まれて数週で薄い赤色の湿疹のような赤あざで気づかれることが多く、徐々に赤みが濃くなり盛り上がっていきます。
その後、生後6〜12か月ごろに増大のピークを迎え、1〜2歳ごろから徐々に小さく、色も薄くなっていきます。
小学校入学前後の年齢になると、多くの乳児血管腫は消退しますが、消退後も凹凸や色ムラ、しこりやシワ、赤みなどの「あと」が残ることがあります。
以前は様子を見る・経過観察という対応を取られることが多かったのですが、現在はレーザーや内服治療を行うことで消退後の「あと」を減らすことができます。
乳児血管腫(いちご状血管腫)ができる原因
乳児血管腫ができる原因については、まだハッキリとはわかっていません。生まれてきた赤ちゃんにあるできものの中で最も多い物の一つで、約1%の赤ちゃんにできると言われており、決して珍しいできものではありません。
低体重で生まれてきた赤ちゃんには、乳児血管腫ができやすくなると言われており、出生体重1,000g未満の赤ちゃんにはおよそ4人に1人の割合で認められると言われています。乳児血管腫は一ヶ所だけに認められる場合が多いのですが、10%〜25%の赤ちゃんには複数箇所に乳児血管腫を認められることもあります。
治療を推奨する方の特徴
1)0歳~1歳までの乳児
乳児血管腫は、生まれてから1歳ごろまでに速いスピードで大きくなります。乳児血管腫が大きくなることで身体機能に影響を及ぼす可能性がある部分は、積極的に治療をお勧めいたします。
2)まぶた、鼻・口付近、手足の関節付近に症状のある方
まぶた付近(視力)、鼻・口付近(呼吸、哺乳)、手足の関節付近(関節の動き)などが、身体機能に影響を及ぼす一例になります。それら以外の場所でも、顔や肘や膝より先の手足など乳児血管腫が目立つ部分にある場合や大きな乳児血管腫、髪の毛の中にあるものなどは、消退後の「あと」が目立たないようにするため治療をお勧めいたします。
乳児血管腫(いちご状血管腫)の治療方法
1)あざごとのアプローチ
乳児血管腫には、平坦〜隆起が少ない赤あざの局面型、いちごのように隆起してくる腫瘤型、皮膚表面にはほとんど赤い色がない皮下型の三種類があります。
それぞれの種類に対して、お子様、ご家族様のご負担を考慮しながら治療法を決めていきます。
局面型と腫瘤型の一部はレーザー治療を、腫瘤型、皮下型は内服治療(プロプラノロール)をお勧めしています。
2)当院のVbeam prima(Vビームプリマ)について
レーザー治療は色素レーザーという、赤い色に反応するレーザーを当てて、乳児血管腫の増大を抑制します。当院ではシネロン・キャンデラ社のVbeam prima (Vビームプリマ)を用いて、乳児血管腫のレーザー治療を行っております。
従来機種のVbeam (Vビーム) 、Vbeam Ⅱ (VビームⅡ) に比べて、1ショット当たりの面積が大きく、高出力で照射が可能です。このため、広範囲に効率よくレーザーを照射することができ、1回の治療も短時間で完了するため、治療をお受けいただく患者様のご負担を減らすことが可能です。
内服治療はプロプラノロールという、元々は高血圧症や狭心症の治療に用いられていたお薬を定期的に内服させて、乳児血管腫の増大を抑制します。皮膚表面に赤い色が無い~少ない皮下型や増大のスピードが早い大きな腫瘤型に、特に有効な治療法となります。
治療イメージ
Vbeam primaにて出力される595nmのレーザー光により、
血液内のヘモグロビンにのみ反応し、様々な赤みの改善に役立ちます。
血管内の病変を起こしている部分では、ヘモグロビンが光エネルギーを吸収し熱エネルギーに変換します。すると血管内で皮膚細胞が線維化し凝固するため、皮膚表面に赤く見えていた症状が改善します。
治療の流れ
- ❶ カウンセリング
- レーザー治療には適応があります。安全に治療が可能と判断されれば、なるべく早期にレーザー照射を行います。
- ❷ 麻酔
- レーザー照射の前に麻酔のテープやクリームを照射範囲に塗布します。麻酔がしっかりと効くまで30〜60分ほどお待ちいただきます。その間の授乳はお控えください。
- ❸ レーザー治療
- 麻酔のお薬が十分に効いたら、患者様をレーザー照射のお部屋にご案内いたします。治療中は安全のため、眼を保護するゴーグルとベッドから落ちないようにするシートベルトのような器具を使いながらレーザーを照射いたします。治療時間は乳児血管腫の大きさにもよりますが、数分〜十数分程度です。
- ❹ 治療後
- 治療後はワセリンを照射部位に塗布してご帰宅となります。自宅でも1日2回のワセリン塗布を照射後1週間まで継続してください。次回の照射は3ヶ月ほど間隔をあけてのご案内となります。
- ❺ 内服治療の場合
- 内服治療を行う場合、赤ちゃんの様子を見ながら少しずつ内服量を増やしていく必要があるため、原則として入院での治療が必要となります。当院と提携している医療機関またはご自宅近くの医療機関をご紹介いたします。退院後、自宅で一定量の内服量を継続していく場合、当院でも内服治療のお薬が処方可能です。
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治療の副作用と注意点
レーザー治療、内服治療ともに乳児血管腫の増大を可能な限り抑え、消退後の「あと」をなるべく少なくすることが治療の目的となります。
このため、治療期間中も乳児血管腫は増大することがあります。増大の結果、乳児血管腫に傷(潰瘍)ができることがあります。この場合はワセリン塗布を、傷が治るまで継続してください。
レーザー照射後は軽いやけどのような状態になり、むくみや腫れ、赤みの増加などが1週間ほど続きます。
1日2回のワセリン塗布を照射後1週間まで続けてください。照射の後、赤色に対する反応が強く出ると、照射部位が内出血(紫色になる)、水ぶくれになるなどの症状が出ることがあります。
内出血は吸収されるまで1〜2週間ほどかかります。水ぶくれになった場合は、なるべく水ぶくれを破かないように注意しながら、ワセリン塗布を水ぶくれが無くなるまで継続してください。水ぶくれが破れてしまった場合も同様の処置を続けてください。
シャワー浴、沐浴は適宜可能ですが、水ぶくれになっている部分はお風呂を出る前にシャワーなどでもう一度流して、清潔に保ってください。
日焼けがあるとレーザー治療の効果が下がるだけでなく、上記のように反応が強く出て水ぶくれになるリスクが高まります。日焼けの程度が強い場合は、リスクを鑑みて照射を延期することがあります。レーザー治療の期間中は乳児血管腫の周囲を遮光するように十分ご注意下さい。
おおよその費用
以下の表をご覧ください。10㎠ごとに費用が変わり、3歳未満のお子様は乳幼児加算がかかります。
居住されている自治体によっては医療費の助成制度が利用できる場合があります。詳しくは各自治体にお問い合わせください。
対象年齢 | 保険適応(2割負担) ※乳幼児加算あり | 保険適応(2割負担) ※乳幼児加算なし | 保険適応(3割負担) |
---|---|---|---|
0歳~3歳未満 | 3歳~小学校入学前 | 小学生~ | |
10㎠未満 | ¥9,820 | ¥5,420 | ¥8,140 |
10㎠以上20㎠未満 | ¥10,820 | ¥6,420 | ¥9,640 |
20㎠以上30㎠未満 | ¥11,820 | ¥7,420 | ¥11,140 |
30㎠以上~40㎠未満 | ¥12,820 | ¥8,420 | ¥12,640 |
- 40㎠以上はこちら
対象年齢 保険適応(2割負担)
※乳幼児加算あり保険適応(2割負担)
※乳幼児加算なし保険適応(3割負担) 0歳~3歳未満 3歳~小学校入学前 小学生~ 40㎠以上~50㎠未満 ¥13,820 ¥9,420 ¥14,140 50㎠以上~60㎠未満 ¥14,820 ¥10,420 ¥15,640 60㎠以上~70㎠未満 ¥15,820 ¥11,420 ¥17,140 70㎠以上~80㎠未満 ¥16,820 ¥12,420 ¥18,640 80㎠以上~90㎠未満 ¥17,820 ¥13,420 ¥20,140 90㎠以上~100㎠未満 ¥18,820 ¥14,420 ¥21,640 100㎠以上~110㎠未満 ¥19,820 ¥15,420 ¥23,140 110㎠以上~120㎠未満 ¥20,820 ¥15,340 ¥23,010 120㎠以上~130㎠未満 ¥21,820 ¥17,420 ¥26,140 130㎠以上~140㎠未満 ¥22,820 ¥18,420 ¥27,640 140㎠以上~150㎠未満 ¥23,820 ¥19,420 ¥29,140 150㎠以上~160㎠未満 ¥24,820 ¥20,420 ¥30,640 160㎠以上~170㎠未満 ¥25,820 ¥21,420 ¥32,140 170㎠以上~180㎠未満 ¥26,820 ¥22,420 ¥33,640
参考・引用文献
河野太郎.“さあレーザー治療を始めよう!2023”.
http://www.kokuseido.co.jp/book/no-0578/